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とあるお宅の倉庫サイトのブログ  【最近:自分の創作におぼれている!▼】

   
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版権/文/WA5
断片的に、しかし鮮明に映る記憶の彼方。
幼い眼に輝いて見えた夢を追い掛ける度、幾度も幾度も掠めるように駆け抜ける。

懐かしい夢を見た。
踊り跳ね、拡幅と縮減を繰り返す影。
凄いと思った。
同時にその全てが憧れになった。

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引金







カァン、カン、…カァン。

「9、10、…11ッ」

正面に構えて一つ、トリガーに通した人差し指を軸に銃身を回して一つ。
そこへ更に銃弾を込めながら背を向けて、前屈した足の間から一つ。
不整に響く銃声と共に、壁に反響して鳴る硬い音が跳ねる。
断片的に、しかし鮮明に映る記憶の彼方。
いつかの日にも、こうして跳ね上がる影を目で追っていた時が在った。
瞼を伏せ、しかし体は休めることなく、その光景を思い返す。
幼い眼に輝いて見えた夢を追い掛ける度、幾度も幾度も掠めるように駆け抜ける。

「12、」

やや屈んだ姿勢から反動を付けて地を蹴り宙返り、浮いた身体を翻らせながら一つ。
カァン。
落ち掛けた影が高く跳ね上がり、南中の空へ放物線を描く。

「ッ! じゅうさ…」

ガキンッ…コン、カラコロコロ。
着地して斜め上へと定めた狙いが、折しも快晴だった空より照り付ける陽光で眩んだ。
狙いが逸れた弾が当たったのはそびえ立つ様な岩の壁。
カラカラ、と少し表面が削れて転がり落ちる音が聞こえる。
弾が当たる筈だった影は地に落ちると軽い音を鳴らして数回跳ねた。
やがて、少し転がってから小石に道を遮られて動きを止める。

「あぁもう、失敗」

肩を落としてかぶりを振れば、はぁ、と溜め息が口からついて出る。
ガリ、と靴底が砂利を踏んで砕く。近付いて落ちた影を拾い上げた。
散々打ち込んだ所為なのか、へこみと穴だらけで元の形がよく判らない。
側面の円形はそれとなく理解出来る程度の面影が残っている。
塗装は剥げ落ちており、下地の銀色が日光を弾いてまた目が眩みそうになる。…目を閉じた。
今思えば、こんな事をもう何年と無く繰り返してきた。
かつて見た映像が今でも忘れられない。
かつて得た感動が今でも失われていない。
だからこそ、それが自分の憧れだった。
道を譲ってくれた幼馴染が、ポスターやブロマイドを集めるまでに憧れる姿があるように。
瞳を開いてみると、塗料が削り取られた銀色に青と白の空が映った。
口許を緩めて息を吐き、手にしたそれを放り投げる。
そして右手の銃を構え、再び引金を引き始めた。

「1、2ッ、」

カァン、カァン。







懐かしい夢を見た。
踊り跳ね、拡幅と縮減を繰り返す影。
凄いと思った。
同時にその全てが憧れだった。

断片的に、しかし鮮明に映る記憶の彼方。
幼い眼に輝いて見えた夢を追い掛ける度、幾度も幾度も掠めるように駆け抜けた。
手を翳して見上げた空に、西へと向かう太陽が白く光る。
寂寞とした荒野に風が鳴いて、空しく通った。











臨むのは脳裏に焼きついた憧れ。
引く引金も引かれた引金もいつか光を浴びると信じている。

執筆:20061228
修正:20070131,20070826
  
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